2019年大会の本読み体験コーナー(第一部/第二部)で読んだ作品を以下に紹介します!是非ご参考になさってください。
※↓それぞれの作品をクリックすると、詳しい説明が表示されます。
【本読み体験・第1部】
【あらすじ】『ウィー・トーマス』
「死んだ猫に捧げる」という短い序文で始まる戯曲。アイルランド解放運動の過激派として活動するパドレイクのもとへ、愛猫ウィー・トーマスが病気だと知らせが届く。しかし、急ぎ帰郷したパドレイクを待っていたのは、幾重にも重ねられた嘘だった。ウィー・トーマスは病気ではなく、すでに死んでおり、死因は病死ではなく、惨殺されており、そして、本当に死んだのはウィー・トーマスではなく・・・?
【作家紹介】マーティン・マクドナー(1970〜)
この地球に現存する劇作家、脚本家として最も力のある作家のひとり。マクドナーが劇作家としてデビューしたのは1996年『ビューティ・クイーン・オブ・リーナン』。古典戯曲のもつ壮大なカタルシスを現代の鬱屈した人間関係から組み上げるこの天才は、瞬く間に演劇・映画の両舞台でスターダムへと昇り詰める。とりわけ、アイルランドを舞台にした彼の作品では、閉ざされた環境にくすぶる人間たちの鬱屈したエネルギーが、鋭く、それでいて滑稽に舞台上で衝突し、火花を散らす。2017年にマクドナーが監督・脚本を務めた映画『スリー・ビルボード』は、ゴールデングローブ最優秀作品賞、アカデミー賞主演女優賞、助演男優賞など多くの賞を獲得。日本でも公開され、大きな話題を呼んだ。
【『本読み会』が語る!オススメポイントはここだ!】
アイルランド解放軍に属する暴力的な男が、惨殺された猫の復讐に走る・・・こう聞くとさも政治的でグロテスクなイメージですが、マクドナーの筆はこれほど軽やかに描くのかと驚きます。そして、とある辺境の地の出来事を普遍的なテーマとして昇華するのが彼の真髄。今回読めるのは抜粋ですが、ぜひ全編通して読んでもらいたい作品です。マクドナー戯曲のジェットコースターに乗って縦横無尽に振り回されましょう。
【あらすじ】『屋上庭園』
学生時代の旧友 三輪と並木は、互いに妻を連れて訪れたデパートの屋上で偶然にも再会する。近況を語り合うが、社会的な成功者である三輪に対し、並木は作家を夢見ながらも凡庸で貧しい生活にあえいでいた。2人の会話は次第にぎこちないものとなり、並木は傷ついたプライドを必死に保とうとするが…
【作家紹介】岸田國士(1890〜1954)
文学者としてパリに留学しフランス演劇史を研究し、帰国後に実作を始める。モダンでユーモラス、和物の枠を超えた軽妙な作風でありながら、人間の真実を鋭く描いた戯曲を次々と発表し、1937年には文学座の創設者の一人となる。劇作家の登竜門として名高い「岸田國士戯曲賞」は、言うまでもなくこの人に由来。他の代表作は『紙風船』『葉桜』『動員挿話』『古い玩具』『命を弄ぶ男ふたり』など。ほとんど古びることのない作風故、今も小劇場から商業演劇に至るまで頻繁に上演されている。
【「古典戯曲を読む会@東京」が語る!オススメポイントはここだ!】
これが本当に93年前に書かれた戯曲!?と驚くほかない新鮮さで、負け組のプライドと虚栄を描く「イタい」物語。終盤の妻の台詞は、多くの人の胸をえぐることだろう。文庫で23ページの短篇なので40分以内に読み切り、出来れば作品の感想なども述べ合う予定。
【あらすじ】『ハムレット』
執筆は、1600年~1602年頃。デンマークの王子ハムレットは、ある夜現れた父王の亡霊から、彼が叔父と母の計略により殺されたことを聞く。復讐を固く誓ったハムレットは、悩み苦しみながらも、狂気を装い、ついに復讐を遂げるが自らも毒刃に倒れる。美しい恋人オフィーリアは、彼の変貌に狂死する。
【作家紹介】ウィリアム・シェイクスピア(1564〜1616)
20歳頃からロンドンで役者、後に座付作者として活躍。約37編の史劇・悲劇・喜劇を創作した。『マクベス』『リア王』『ロミオとジュリエット』『オセロー』『リチャード三世』『夏の夜の夢』『十二夜』『ヴェニスの商人』『じゃじゃ馬ならし』『から騒ぎ』『お気に召すまま』・・・作品を挙げれば、誰もが名を知る傑作ばかり。世界で最も有名な劇作家。
【「古典戯曲を読む会@静岡」が語る!オススメポイントはここだ!】
数々の名セリフを残したシェイクスピア悲劇の最高傑作「ハムレット」の中で、一番好きな名台詞「to be or not to be 」のモノローグと、その後のオフェリアへの「尼寺へ行け」のシーンの日本語訳を、色々読み比べて楽しみたいと思っております!
【あらすじ】『海神別荘』
時は大正時代。深海の底には海底世界の王子(龍宮城の乙姫の弟)が住む御殿がある。金銀宝玉溢れる理想郷だ。そこへ貧しい漁師の美しい娘が輿入れにやってくる。漁師は自分の欲望と引き換えに娘を売り渡したのだった。やがて王子と対面する娘は、自分が生きていることを知る。故郷の父にそのことを知らせようと、公子の説得を振り切りきって陸へと戻る。しかし陸で見る彼女の姿は蛇体となっており、誰にも娘と見分けられず泣きながら別荘へと帰る…
【作家紹介】泉鏡花(1873〜1900)
金沢出身の明治大正昭和期の小説家。上京して尾崎紅葉門下となる。自ら反自然主義を標榜し、300編あまりの作品を生み出す。鏡花の作品を特徴づけるのは、母性思慕、幻想、怪奇、エロチシズム、耽美主義、ロマンチシズム、観念性など。その独特の文体は近代小説史に異彩を放つ。代表作は小説『夜行巡査』『外科室』『高野聖』『歌行燈』など。戯曲は『夜叉ヶ池』『天守物語』など。
【「いずも戯曲読書会」が語る!オススメポイントはここだ!】
「いずも戯曲読書会」の最近の作品傾向の一例をご紹介するために選んだのが本作です。鏡花や島村抱月などの明治・大正戯曲の復刻版は、漢字部分のすべてにルビ(ふりがな)が振ってあり、これは初見で読まれる方(出雲市の場合はほぼ全員がそうです)には好都合です。また、反自然主義作品のキャラクターなどは田舎訛りのほうがより味わい深い場合が多々あります。地方にはけっこう古い言葉や言い回しが残っていて、一昔前ほどの日本語なら、若い人でも意外と親和性があったりします。「幽玄華麗な独特の文体と巧緻を尽くした作風」といわれる鏡花戯曲。表意文字(漢字)で映像をしっかりイメージし、表音文字(かな)で豊かな音声表現へと昇華させていただければと思っています。今回は時間の関係で抜粋となりますが、どの景を読むかはご参加の方々の人数や男女比などで判断し、即興で対応したいと考えています。
【本読み体験・第2部】
【あらすじ】『好日』
主人公は貧しい暮らしを送る劇作家「三好」。自らとその周囲の人々の生活を生々しく、そして滑稽に描いた三好戯曲の一つの完成形とも言える作品。が、余りにも赤裸々な生活の描写に、発表されたのは作者の死後のことだった。三好十郎の”私戯曲”の傑作。
【作家紹介】三好十郎(1902〜1958)
日本の現代演劇を代表する作家の一人。プロレタリア演劇の作家として活動を始めたが、その後転向、戦中は自らの転向体験を、戦後は自らの戦争責任を振り返る中で、数々の傑作を生み出していった。自意識に苦しんだ天才とも言える。近年は上演も数多く、再評価が進んでいる。代表作は、『浮標』『胎内』『炎の人』『冒した者』など。
【『本読み会』が語る!オススメポイントはここだ!】
余りに赤裸々に自分のことを書きすぎて、発表できなくなってしまったと言われる作品。情けなくって借金もある、なのに何故か女にモテる。「人間、なるべきは作家だな」と思わせる作品。笑えます。実は『本読み会』初期の頃、この作品を読んだことがあるのですが、参加者が集まらず、なんと男性ばかり3名だけ!しかしこの回、蓋を開けてみれば、五本の指に入るくらい楽しめた回となりました。「良い戯曲さえあれば、本読みは絶対楽しめる!」。活動を続ける勇気をもらった作品です。当日は、戯曲の一部を抜粋して読んでいく予定です。
【作家紹介】アントン・チェーホフ(1860〜1904)
ロシアの小説家・劇作家。医師として活動を続けながら、数多くの小説を発表する。初期は食い扶持を稼ぐための軽いユーモア短篇を量産していたが、中期以降は卑俗な現実と理想の人生の間で引き裂かれる人間の姿を描いた、より文学的な作品を発表するようになる。『犬を連れた奥さん』『かわいい女』『六号室』『黒衣の僧』『中二階のある家』などの名編によって、重厚長大な作風のトルストイやドストエフスキーとは異なる評価を確立。短編小説の名手として、今も広く愛読されている。
晩年には演劇界とのつながりが密接になり、モスクワ芸術座などに戯曲を書き下ろすようになる。大げさでドラマチックな物語を排し、日常的な風景の中で人生の機微を見つめたリアリズムタッチの作風は、いわゆる「芝居がかった」作品が主流だった当時の演劇界に革命を起こし、近代演劇のスタイルを確立した。特に『かもめ』『ワーニャ伯父さん』『三人姉妹』『桜の園』はチェーホフ四大戯曲と呼ばれ、今も様々な演出によって世界中で上演され続けている。
二十代半ばから病み続けた結核により44歳で死亡。最後の言葉はドイツ語で「私は死ぬ」だったとされる。その律儀すぎる言葉は、自らに訪れる死を医師として客観的に見続けたチェーホフが、作家として最後に残した喜劇的台詞だったのかもしれない。
【「古典戯曲を読む会@東京」が語る!オススメポイントはここだ!】
チェーホフの四大戯曲はどれも四幕構成で、その内の一幕だけを大急ぎで読んでも面白さは伝わりにくいと考え、抜粋しても分かりやすい名場面的なところをアンソロジー的に読むことにしました。
選ばれたのは『かもめ』『三人姉妹』『ワーニャ伯父さん』からの一場面。『桜の園』は、作品全体を通して読めば面白いのですが、四大戯曲の中では比較的ストーリー性が希薄で、初見の人が前後関係を知らずに抜粋で読んでも面白い部分があまり無いので、落選しました。『桜の園』を蹴落として勝ち残った3つの戯曲、誰の翻訳のどのシーンかは当日のお楽しみ! チェーホフをあまり知らない人もよく知っている人も楽しめる内容になるはずです。
日本で言えば、文学座などの新劇から「静かな演劇」と呼ばれる平田オリザの系統まで、ストレートプレイの多くはチェーホフ劇の末裔。チェーホフがいなかったら、世界の演劇シーンは今とは全く違ったものになっていたことでしょう。現代の演劇のルーツであり、100年以上経った今も人間の真実を照らしてやまないチェーホフの世界に触れてみてください。
【あらすじ】『熱帯樹』
1960年 文学座初演。莫大な財産を狙い、息子に夫を殺させることを企む妻と、その計画を知った娘が愛する兄に母を殺させようとする家族の悲劇の物語。愛と憎しみが錯綜する男女関係を描いたギリシア悲劇的なドラマチックな趣の中に、父性愛や母性愛の不在から惹き起される親子・家族関係の崩壊や、人間性の深淵が描かれている。
【作家紹介】三島由紀夫(1925〜1970)
東京生れ。本名、平岡公威(きみたけ)。1949年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、1954年『潮騒』(新潮社文学賞)、1956年『金閣寺』(読売文学賞)、1965年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。1970年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される。
【「古典戯曲を読む会@静岡」が語る!オススメポイントはここだ!】
ギリシャ悲劇「エレクトラ」を彷彿とさせる作品。初見で素読みをするだけでも耽美な世界が立ち現れてしまう三島戯曲のスゴさを堪能できるはず!
【あらすじ】『サロメ』
若くて美しい王女サロメは、地下牢に幽閉中の預言者ヨカナーンに惹かれるが、ヨカナーンはサロメには無関心。一方、サロメに魅せられた継父ヘロデ王は、サロメにエロティックな欲望を抱いている。ヘロデ王はサロメの実母である王妃ヘロディアとの口論の末、「不毛な種なし」と罵られると、その陰鬱な気分を晴らすために、サロメに王の前で踊りを披露するよう命じる。サロメは宴会場の王座の前で「七つのヴェールの踊り」を踊り終えると、褒美として銀の大皿に載せたヨカナーンの生首を要求する…
【作家紹介】オスカー・ワイルド(1854〜1900)
アイルランド出身の作家・劇作家。オックスフォード大学を首席で卒業。奇抜な服装や言動でロンドン社交界で人気者となる。滞在先のパリで書かれた『サロメ』(フランス語版)の英訳版が出版(1894年)されると、ビアズリーの挿画とともに話題になり、その後も話題作を発表し19世紀末の時代の寵児となる。やがて同性愛の罪で逮捕・投獄。出獄後パリにて客死。幻想的かつ耽美的作風は、芥川龍之介、谷崎潤一郎、泉鏡花、三島由紀夫など多くの日本人作家にも影響を及ぼしたとされる。代表作は、長編小説『ドリアン・グレイの肖像』、童話『幸福な王子』など。戯曲は『ウィンダミア卿夫人の扇』『理想の夫』など。
【「いずも戯曲読書会」が語る!オススメポイントはここだ!】
「いずも戯曲読書会」の初期の課題テキストのうち、もっとも印象深い作品です。保守的で依存体質、無口無表情と評される出雲人気質の参加メンバーに、この戯曲の背徳的で詩的で饒舌な台詞はどんな作用を及ぼすだろうかと挑発的に突きつけたつもりが、実に朗々と激情あふるる表情豊かな表現として弾き返されてきました。参加者の感想をまとめると、<非日常を生きる快感>! このうち、<生きる>の部分は主宰者の感想です。今回は時間の関係で抜粋となりますが、どの景を読むかはご参加の方々の人数や男女比などで判断し、即興で対応したいと考えています。お楽しみいただければ幸いです。