『戯曲を読む会Onlineフェスティバル2020』開催レポート

 

 全国に散らばる“戯曲を読む会”。「普段はバラバラに活動しているけれど、集まれば面白いことができるんじゃないか?」そんな思いつきから昨年9月に開催、盛況のうちに幕を閉じたのが、『戯曲を読む会 全国大会2019』でした。

 あれから1年。新型コロナウィルス感染拡大により社会の様相は一変しました。人が集まって声を出すなんて以ての外!という、「戯曲を読む会」にとっては、とても厳しい状況です。
 しばらくの間はイベントなんて開催せず、大人しく黙読でもしているか・・・いやいや、戯曲が養分の我々です。そんなに大人しくはしていられません!
 「こんな時代だからこそ、あえて戯曲を読んでやるんだ!」「みんなで一緒に声に出して読んでやるんだ!」という謎の使命感のもと、『戯曲を読む会 Onlineフェスティバル2020』の企画は動き出しました。

 オンラインでも読む会は楽しめるのか。技術的な問題はクリアできるのだろうか。どうしたら魅力的なプログラムを用意できるだろうか。不安や懸念はいろいろありましたが、そこは勢いと皆様の支えとで乗り越えて、なんとか無事に用意した全イベントを終了することができました。まずは皆様、応援いただき、本当にありがとうございました。

 さて、以下このページでは、今回のフェスティバルを振り返って、各団体からのレポートや参加者アンケートの結果など、まとめてご報告させていただこうと思います。フェスティバルを終えてみて、良かったところ、改善すべきところ、いろいろ見えてきました。この学びを、ぜひ次の機会に活かせればと思っています。


開催情報&団体レポート

フェスティバル開催期間:2020.9.12(土)〜9.28(日)

セレモニー
【開会式!】
・・・9.19
YouTubeアーカイブ配信:https://youtu.be/AxIyg7aZ-M0

【閉会式!】・・・9.27
YouTubeアーカイブ配信:https://youtu.be/s15YAazZZvs

【オンライン打ち上げ!】・・・9.27

戯曲を読む会
【戯曲を読む集い】・・・9.12、9.21、9.22
9.12 番外編:野田秀樹『贋作・桜の森の満開の下』(レポート
9.21 定例会:創作/つかこうへい/ゲーテ(レポート
9.22 番外編:野田秀樹『贋作・桜の森の満開の下』(レポート

【古典戯曲を読む会@東京】・・・9.20
長谷川伸『瞼の母』

【『本読み会』】・・・9.21
イヨネスコ『禿の女歌手』(レポート

【いずも戯曲読書会】・・・9.23、9.25
9.23 女優の近代① 松井須磨子の『復活』
9.25 女優の近代② 伊沢蘭奢の『マダムX』
レポート

【古典戯曲を読む会@名古屋】・・・9.24、9.27
9.24 イプセン『幽霊』
9.27 芥川龍之介『二人小町』『藪の中』

【戯曲組】・・・9.26
ピランデッロ『ヘンリー四世』


アンケート結果&フェスティバル振り返り

 さて、ここからは、参加者アンケートの結果を一部ご紹介しながら、フェスティバルを振り返っていきたいと思います。

①フェスティバル延べ参加人数

 今回のフェスティバル、延べ人数ではありますが、なんと206名の方にご参加いただきました!内訳は以下の通りです。

 大変多くの方にご参加いただき、本当に嬉しく思います。やはりオンラインということで、複数日に渡る長期開催が可能になったこと、遠くからでもご参加いただけたことが大きかったのでしょう。
 また【覗き見】での参加が84人と、こちらが想定していた以上の人気で、驚きました。アンケートの自由記述には、「会の様子を知ることができた」「気軽に参加できた」などのコメントがあり、まずは【覗き見】くらいから始めてみよう、というニーズが結構あったことが分かります。
 主催者たちの間でも、「今後はそれぞれの会でも【覗き見】システムを導入してみようか」などと話しているところです。どうぞお楽しみに!

②参加者(アンケート回答者)のイメージ

 今回、アンケートには41名の方がご回答くださいました。そのアンケート結果から分かる範囲ではありますが、どのような方がフェスティバルにご参加くださったのか、概要をお伝えしようと思います。
 まずは、「性別」「年齢」「居住地域」から。

 性別は、“女性”の回答がやや多めでした。“その他”の回答については、昨年度の大会でも、ご選択くださった方がいらっしゃいました。性の多様性が尊重される時代です。戯曲を読む会では、役の割り振りの際に「男性」「女性」で役を割り振ることが多いですが、何かできることはないだろうかとも思います。もしご意見ご提案などあれば、いろいろいただきたいところです。

 年齢については、50代の方が約半数でした。10代から60代まで、幅広くご参加いただけたようです。

 お住まいの地域については、さすがオンライン開催。かなり広がりがありました。関東の参加者が多いのは、主宰団体に東京の団体が多かったからでしょう。

③参加者(アンケート回答者)の参加以前の経験

 さて次は、「昨年度大会への参加の有無」「戯曲との関わり」「戯曲を読む会との関わり」について。

 意外や意外、昨年の大会に参加していない人が8割以上という結果でした。主宰団体が増えたこと、オンライン開催で地方からの参加が増えたこと(前回は参加したくてもできなかった方がいらっしゃったのでは)が影響していると思われます。

 戯曲との関わりに関しては、やはり経験者の割合が相当高かったです。半数以上は戯曲を声に出して読んだことがあって、さらに2割ほどは書いたこともある・・・こんな集団はどこを探してもありません笑。

 戯曲を読む会への参加経験も、やはりかなり高かったです。今回は広報の期間がかなり短かったので仕方ない面もありますが、「戯曲を知らない人にも本読みの面白さを知ってもらう」「戯曲文化の裾野を広げる」という我々の使命(?)を考えると、もう少し未経験者の参加割合を増やしたいところです。これは、昨年大会から引き続いての課題と言えますね。がんばります!

④今フェスティバルでの参加の仕方

 次は、アンケート回答者が、今フェスティバルにどのように参加したかという点についてです。まずは「開会式」等のセレモニーから。

 「開会式」「閉会式」「オンライン打ち上げ」には、アンケート回答者41名のうち、約半数の方がご参加(ご視聴)くださいました。「開会式」「閉会式」に関しては、YouTubeでのアーカイブ視聴も可能なので、今はもう少し増えているかも知れません。
 皆様からいただいたコメントの一部を抜粋で見てみると、

 ・「開会式」はそれぞれ会の様子や目的が分かって良かった。参加するための参考になった。
 ・「閉会式」は参加者の感想、主催者の苦労が分かって良かった。
 ・「オンライン打ち上げ」、初対面の人たちとこんなに楽しく話せるとは!これからのことも考えられ、何より、知り合えた感じがして楽しかった。
 ・主催者の戯曲愛、熱意が伝わってきた。

などの意見を頂いています。戯曲愛、伝わって良かった・・・。

 さて、次はフェスティバルのメイン、「戯曲を読む会」への参加のあり方について。

 アンケートに回答いただいた方たちの半数以上が1〜2回の参加でした。参加形態は、【読み手】や【覗き見】が多かったようです。中には5〜6回参加という猛者もいて、びっくり。これぞオンラインのメリットと感じます。
 頂いたコメントでも、

 ・いろいろな会に参加できて良かった。
 ・普段参加できない会にも出られて最高!
 ・【覗き見】システムは気軽に参加できて良かった。どのような会か知る上で有効だった。

などの意見を頂きました。

 会の進行については、主宰の人柄や個性、準備やリサーチのあり方などに、ポジティブなコメントをたくさんいただきました。
 また、音声トラブルや、役の割り振りなど、進行方法についてのご意見・ご提案もいただきました。ローカルな手作り感が特徴の対面開催に比べ、より広く、様々な拡がりを持つのがオンライン開催の特徴です。主催として、準備すべきこともいろいろ変わってくるのだなぁと勉強になりました。

⑤満足度と次回への期待

 さて最後に、参加者(アンケート回答者)の満足度と、次回開催への期待についてです。

 素晴らしい!昨年の大会に比べても、非常に良い評価をいただけました。嬉しいです。今後に期待することとしても、「コロナが収束して対面での開催が復活しても、オンラインフェスティバルは続けて欲しい」という意見をたくさんいただいており、オンラインでの開催が喜ばれていることが分かります。
 そのほか、「初心者のため、またはプロのための読む会」「読み方のワークショップ」「主催者が読み手のリーディング」等の企画のご提案や、開催時間帯や時期に関するご要望など、積極的なコメントを多数いただいています。せっかく頂いた応援のお声ですので、今後に活かし、また魅力的な企画をご案内できたらと考えています。今後もどうぞよろしくお願いいたします!


フェスティバルを終えて

 さて、ここまで長々とレポートにお付き合いいただき、ありがとうございました。最後にフェスティバル言い出しっぺ(「フェスティバル・コーディネーター」の肩書きももらいましたが笑)である、私『本読み会』大野から一言ご挨拶させていただいて、『戯曲を読む会Onlineフェスティバル』の終幕とさせていただこうと思います。

 今回のフェスティバル、個人的に最大のテーマは、「オンラインで本読みは可能なのか」ということでした。そもそも演劇は肉体の芸術、芸能であって、“場”というものがその土台にあるものです。オンラインの仮想空間は、“場”となることができるのか・・・。これは“戯曲を読む会”のみならず、コロナ禍の現在、たくさんの方が様々な場所で直面している問題だろうと思います。

 今回、『本読み会』でイヨネスコ作『禿の女歌手』を読んでいた際に、印象的な出来事がありました。【読み手】の方々がセリフを読んでいるのを聞いて、私は可笑しくて可笑しくて大笑いしていたのですが、『本読み会』では本読みをしている最中、役として登場する参加者以外はミュート/ビデオオフにする決まりにしているので、私の笑いが誰にも伝わっていなかったのです。観客の反応は演劇の重要な要素の一つです。対面の本読みならば、私の大笑いは戯曲の世界を形作る要素の一つになっていたでしょうが、オンラインではそれが成立しない。これは、非常にもどかしさを感じさせる場面で、オンライン本読みのハッキリとした失点でした。

 戯曲を声に出して読む楽しさの中には、【読み手】として戯曲の世界を形作っていく楽しさの他に、【聞き手】として戯曲の物語に対して“反応する”楽しさもあるということ、そして物語の語り手と聞き手のやり取りの連なりの中に、演劇や本読みの面白さ、本質があるということに、今更ながら気づかされた瞬間でした。

 しかし、オンライン開催が失点だらけかと言うと、実際はむしろその逆だったと言えるでしょう。『戯曲を読む会Onlineフェスティバル2020』は、大変好評のうちに幕を下ろしました。オンライン開催ならば、どこからでも参加できる。どんな日程でも自由に組むことができる。場所や時間の制限を超えるオンラインの強大なメリットは、主宰にとっても参加者にとっても、参加のハードルを下げることに一役買い、たくさんの交流を生み出しました。オンライン打ち上げでの皆さんの朗らかな笑顔を見れば、今回のイベントが大成功だったことに疑問の余地はありません。オンライン開催は、戯曲文化の裾野を広げたいという我々の願いにも、大きな力と可能性を与えてくれました。

 だからこそ、なのです。私のあの大笑いも含めて、なんとか戯曲の世界を共有する方法はないものか。それが我々戯曲を読む会の、次の課題だと言えるでしょう。難しい問題ですが、少しずつ考えていきたいと、今はそう思っています。

 コロナ禍の今年も、我々はオンラインという仮想空間で、“集まって戯曲を読む”ということをなんとか成し遂げました。いえ、我々が集まったのは、本当は、戯曲が紡ぎ出す物語の世界の中だったのです。次の開催がオンラインなのか対面なのかは、今はまだ分かりません。ですが、どちらにしたって良い戯曲さえあれば、きっと楽しめるだろうと思います。

 長くなりましたが、これで『戯曲を読む会Onlineフェスティバル2020』を終えたいと思います。皆様、応援本当にありがとうございました。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
(『本読み会』大野遙)

開会式の様子。次回イベントをお楽しみに!

全国の“戯曲を読む会”

まだ数は少ないですが、“戯曲を読む会”は全国各地で活動しています。それぞれの団体についてご紹介します。

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