皆さんは、戯曲を読んだことがありますか?
そもそも、戯曲とは何か、ご存知ですか?
戯曲とは、小説や詩などと同じ、文学の一ジャンル。主に「セリフ」と「ト書き」で構成されていて、一般的には、お芝居の「台本」や「脚本」などと呼ばれている読み物のことです。
「セリフ」と「ト書き」で書かれている——。それはつまり、「登場人物が発した言葉」と、「登場人物の行う行動」だけで、場面や物語を表現しているということ。
小説のように地の文がないので、戯曲に親しみがない方が読んでみると、何が描かれているのか、少し分かりにくいところがあるのも事実です。
しかし、それは戯曲の本当の姿ではありません。
実は戯曲は、”ある工夫を加えて読む”ことで、誰でも簡単に理解できる、しかも小説や映画にも負けない魅力を持った、上質のエンタテイメントに化けるのです。
その工夫とは、”声に出して読むこと”。
そもそもお芝居の台本である戯曲は、声に出して読むことを前提に書かれています。
声に出して読んでみると、黙読している時には気づかなかった登場人物の気持ちが感じられたり、思いもよらないセリフで笑えたり。そんなことがよくあります。
戯曲の言葉は、声に出して読んだ時に、はじめてその魅力が花開くように書かれているのです。
戯曲を声に出して読む、なんて聞くと、
「セリフを読むなんて、俳優でもないのにムリ!」
「上手に読めるわけない!」
そんな風に感じるかもしれません。
ですが、心配はいりません。
歌が歌手だけのものでないように、戯曲もまた、俳優だけのものではないのです。
好きな歌を歌って楽しむのに、プロのように上手に歌う必要なんかないですよね。鼻歌を歌ったり、お風呂で熱唱したり、それぞれが、それぞれの歌い方で楽しんでいると思います。
戯曲もそれと同じで、自分の好きな戯曲、セリフを、好きなように語って楽しめれば、それでいいんです。
ちょうど戯曲の本読みは、「演劇のカラオケ」とも喩えられています。
カラオケのように、誰でも気軽に楽しめるエンタテイメントなのです。
さて、戯曲を読むことに興味が出ても、そこからどうしたら良いものか、なかなか分かりませんよね。戯曲を買ってみたとして、家でページをめくって、すぐに声に出して読み始められるような人は、なかなかいないだろうと思います。
そんな時にピッタリなのが、戯曲専門の読書会。
そもそも、一人芝居でない限り、戯曲の物語には複数の人物が登場しますし、そうした登場人物同士の交わす会話こそが戯曲の土台です。そうした会話を読み進める際、一人で二人以上を演じ分けて楽しむことも可能ですが(私は家でよくやります笑)、たくさんの参加者がいて、役を分担して読める読書会は、実は戯曲を読んで楽しむには、最も適した形態だと言えるでしょう。
それに、自分以外の方がセリフを読むのを聞いている時間というのが、実は戯曲の読書会の醍醐味でもあるのです。
自分では思いも寄らないような読み方があったり、同じ登場人物なのに、読む人によって全く違う人物に見えてきたり。実は人の声には多くの情報が詰まっていて、「誰が読むのか」ということで、戯曲もまた違う顔を見せてくれるのです。
『戯曲を読む会ネットワーク』の最大の目標は、「少しでも多くの方に、戯曲に興味を持ってもらう」ということ。戯曲を読む楽しさを少しでも多くの人に知ってもらい、「戯曲の読書会に参加する人」が増えたり、参加するだけじゃなく「自分で戯曲の読書会を主催する人」が増えたりするといいなぁと考えています。